海辺を歩いていると、男がいきなり僕の前に来た。
「私はアトランティスから来た」
男は若く、いかにもうさんくさそうだった。
そこで、私は質問した。
「私に何の用事だ?」
「このツボには不思議なパワーがあるんだ。買ってくれないか?」
ツボとはパターン通りだ。
「おまえ、アトランティスから来たって嘘だろ」と私は指摘した。
「えっ? なんでばれたの?」と男は狼狽した。いや、ばれて当たり前だって。
「みんなレムリア知らないから、分かりやすくアトランティスって言っただけなのに!」と叫んで男は海に飛び込んで消えてしまった。それっきり男は浮かんでこなかった。試しにツボを海に入れてみると、なぜか魚が勝手にツボに入ってよく取れた。
(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)